ドーナツアンプとトスカスピーカー

キツネはそれを巣に持ち帰り たいせつにたいせつに育てました

ネルソン ネルソン

何気なくつけていたテレビ。

アメリカの片田舎の冬景色。

降り積もる白

ふる ふる ふる。


壮大さが 寒さに拍車をかける。


これだけの広さのある冬は

一点の感情で精一杯。


その分 春になれば草木や生き物達の騒がしい息吹を想像して やっと一息つける安心感。


茶色く錆びた鉄パイプの上に スズメのような小鳥が一羽。


ネルソンさんが近づいても飛び立つ気配が無い。


いよいよ手が届く距離まで近づき

小鳥は忙しく翼を動かすも、

宙へは舞わない。


脚が凍り 鉄パイプにくっついてしまったようだ。


手のひらを小鳥へと伸ばすネルソンさん。


パタパタと一生懸命 飛び立とうと羽を動かす。


ネルソンさんの大きな手が小鳥を包む。


羽を動かし続ける小鳥。


広い広い冬の中の景色。


空も大地も真っ白く


白はまだまだ降ってくる。


小さな小鳥を包む 大きな手。


色褪せたデニムは空の色


大きな手に暖かい息を吹きかける口には 雪のような白い髭


煙のような息は すぐにかき消されてしまう。


羽を動かすことをやめた小鳥は

ネルソンさんの温もりの中で

ゆっくりと瞬きを繰り返す。





そんなワンシーンで涙がこぼれた。


冬は厳しく

色々な物を奪っていく。


だから わずかな物だけを大切に抱えて春を待つ。


きっと全部は持っていられない。


ネルソン ネルソン


春まで あともう少し